第一生命は、企業メセナ活動の一環として、現代美術の展覧会「VOCA(ヴォーカ)展*」の受賞作品の一部を所蔵し、第一生命ギャラリー/ロビーで公開しております。また、年に数回、VOCA展受賞作家の個展を開催し、作家の方には発表の場を、一般のお客さまには現代アート鑑賞の場を提供しています。
今回は「VOCA展2016」VOCA奨励賞受賞作家 鈴木 のぞみ(すずき のぞみ)さんの個展を開催します。
*The Vision of Contemporary Art 現代美術の展望-新しい平面の作家たち
鈴木のぞみは、光の諸現象により事物に見出すことができる潜像を〈事物の記憶〉であると捉え、写真の原理を通して顕在化を試みてきました。本展のタイトル「Words of Light(光の言葉)」とは、光によって描写された自発的な像が「photography(写真)」と呼ばれるようになる以前に、W・H・フォックス・トルボットが写真とそれを生み出す自然とのあいだの関係を言葉であらわそうと記述した語句のひとつから引用しています。本展では、日常の穴に生じている小穴投影現象(カメラ・オブスクラの原理)を感光材に定着することで可視化した作品群を、初期作品を含めて提示します。「光の言葉」は、私たちに何を語りかけるのでしょうか。
~作家より~
私たちの暮らしには、さまざまな用途や意匠、生物の営み、あるいは欠損から穴があいている事物が在ります。日常では他の光に紛れていますが、それらの穴に生じるピンホール現象により結ばれている光の像は、いま、ここに確かに存在しています。それはまるで、光が人知れず独白を囁いているようです。本展では、私たちの身のまわりにある「ピンホール」と呼ぶにはやや大きすぎる穴が映し出す光の像をフィルムや印画紙などの感光材に定着することで、そこかしこに溢れている「光の言葉」の可視化を試みます。事物に生じている光の像をさまざまな感光材に受けとめる営みとは、多様な写真言語を通して「光の言葉」を翻訳するような行為なのかもしれません。私はここに提示されたイメージの作者なのではなく、「光の言葉」の媒体者であり、翻訳者であれたらと思います。