吉田はこれまで、アナログとデジタルを往還させる写真作品の制作、空間全体を使ったインスタレーションにて独自の風景を築き上げてきました。 第11回写真「1_WALL」*グランプリ受賞(2014)、その後第11回 shiseido art egg入選(2017)、Prix Pictet Japan Award 2017ファイナリスト、第46回木村伊兵衛写真賞(2020+2021年度)など数々受賞してきた写真家です。
本展で吉田は、これまでとは全く異なるアプローチで新作を発表します。写真の現像やプリント、イメージの重ね合わせなどを手作業で行ってきた吉田が、オフセット印刷機で大量に複製したイメージを用いて空間を構成します。
写真や印刷は、機械を通してはじめてイメージが可視化されるともいえます。時折、機械は人間が意図したイメージから外れ、肉眼で捉えることができないものも表出させることがあります。吉田は不可視の存在への探究やイメージの氾濫から、実態のないものの現出に挑みます。
機械と手を組み、予期せぬエラーに身を委ねた時、イメージはどのように崩れ、何が現れるのでしょうか。日々大量のイメージを目にする私たちに、見えるもの/見えないものとは何かを改めて問いかけ、その境界線を探ろうと試みます。