向井ひかりは、人の目線の高さほどある白い箱の側面や上部に、ストローや砂、鏡といった、誰もが日常的に目にしている素材を使った小さな立体作品や、ドローイング、映像を配置した「対岸は見えない」で、第1回BUG Art Award*にてグランプリを受賞しました。審査員からは独創的な着眼点とアイディア、そしてBUGの空間を意識した展示方法が評価されました。本展は、新しい表現への挑戦や、アーティストとしてのキャリアを支援することを目的としています。
向井は、日常生活のなかで頭に浮かぶ直感的なイメージを具現化することを大事にしています。例えば、行き交う車がルールを正確に守ることにより、自ずと動きを制御されていく様子や、水の入ったバケツの中に晒(さらし)が浮かび、光によって透けて見える光景など、私たちが日々見落としてしまう些細な出来事を観察し、作品を生み出します。
また、武蔵野美術大学造形学部彫刻学科に在学の頃より一貫して、木片やガラス、紙粘土といった身近な素材を組み合わせ、両手で持てるサイズの小さな立体作品を作ってきました。本展では、天井高7.2mの空間を隅々まで使い、向井にとって最大規模となる新作に挑戦します。グランプリ受賞から約1年、準備を重ねてきた向井の個展をぜひご覧ください。