藤元明は東京藝術大学デザイン科を卒業し、イタリアの FABRICA での活動経験を経て、現代美術領域から作品やプロジェクトを通じて社会的メッセージを発信してきました。その特徴は、表現手法を限定することなく、領域横断的なコラボレーションと、振幅の広さにあります。藤元のアートとは、社会への「問い」の設定と、それを作品を通じて社会にどのように接続させるのかという行為そのものです。
今回、藤元は新たな挑戦として、海洋プラスチックごみという大いなる「問い」に向き合います。プラスチックは石油加工製品として 1930 年代から工業化され、現在は世界で年間 3 億トンを出荷、これまでに海へ流出したプラスチックの総量は 1 億 5 千万トンとも言われています。その多くはマイクロプラスチックとして所在不明であり、浮いているものは海流に乗り想像を超える年月漂い続け、時に漂着し我々の前に大量に現出します。回収してもすぐにどこからか漂着し、回収したごみもその地域の処理能力を超えています。それらの不条理はこれからも繰り返されるでしょう。安く便利なプラスチックは、高度経済成長時代の暮らしを豊かにし、人々に便利と快適を約束しましたが、次世代の私達に回収不能な漂流物として受け継がれていきます。普段の暮らしからは見えない、こうした絶望的状況は、国境を超えた陸の話であり、海では解決出来ません。特定の悪者が存在しないこの「問い」に、藤元はアーティストとしてどのように向き合い、作品を展開していくのか。
制御出来ない社会、環境などで起こる現象の中で、何を見て、どう生きるべきなのか、と様々な分野や人々との対話を呼びかけます。 ぜひ会場にお越しいただき、この「問い」を受け止めてください。