永原康史は、マルチメディアやメディアデザインという言葉が誕生した1980年代からメディアとデザインの可能性を探求してきた先駆者のひとりです。Macintoshが日本に最初に紹介された1984年から、永原はいち早くコンピューターを使ったデザインに取り組んできました。グラフィックデザイナーがコンピューターを使うのは今でこそ当たり前のことですが、永原が特殊なのは、コンピューターをペンや定規の代替物としてではなく、新しいメディアとして捉えていた点です。デジタルとフィジカルをつなぐ新たなデザイン表現を生み出す彼の実験は、一連の電子ブック作品やアルゴリズミック・タイポグラフィ作品に結実していきました。
「メディアとはなかだちするもののこと、メディアデザインとはなかだちのデザイン」とは、永原がさまざまな場所で表明してきたキーワードです。展覧会タイトルの「時間のなかだち」は、40年以上にわたる永原のメディアデザインの実践を振り返るとともに、メディアの過去と未来を橋渡しするという意味が込められています。パーソナルコンピューターにつづくインターネットの到来、さらにはグローバル資本主義経済の発展のなかで、メディアとデザインを取り巻く環境は様変わりしました。直近では、生成AIや空間コンピューティング、NFTなどの新たなデジタル技術の波が、デザイナーの仕事にも大きな影響を与えようとしています。展覧会サブタイトル「デザインとNFTの邂逅」は、NFTを新しいメディアとして捉えた永原の最新の試みを表しています。
本展が、ひとりでも多くの方に、とりわけ、生まれたときからコンピューターやインターネットが存在していた若いクリエーターたちに、グラフィックデザイナー/メディアデザイナー、永原康史の業績を知っていただく機会となれば幸いです。
本展にて、NFTの特典を体験していただけます。
会場で登録できますが、事前登録が便利です。
▽事前登録サイト
URLは後日ギャラリーHPでご案内します。
■オープニング・レセプション
2024年3月27日(水)17:00-19:00(入場自由)
■トークイベント
2024年4月6日(土)15:00-16:30(要予約)/ゲスト:高尾俊介
※予約方法は後日ギャラリーHPにアップします。
■主催
公益財団法人DNP文化振興財団
■協力
施井泰平(スタートバーン)、高尾俊介、ニコール・シュミット、加藤明洋、楠見春美
■永原康史 プロフィール
1955年大阪府生まれ。グラフィックデザイナー。京都市立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程満期退学(視覚情報デザイン)。電子メディアや展覧会のプロジェクトも手がけメディア横断的に活動する。1983年、永原康史事務所設立。1997年〜2006年IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)教授。2006年〜2023年多摩美術大学情報デザイン学科教授。2005年 愛知万博「サイバー日本館」、2008年 スペイン・サラゴサ万博日本館サイトのアートディレクターを歴任。2022年には初の作品集『よむかたち デジタルとフィジカルをつなぐメディアデザインの実践』を刊行、『デザイン・ウィズ・コンピュータ』(1999年)、『デザインの風景』(2010年)、『インフォグラフィックスの潮流:情報と図解の近代史』(2016年)など著書多数。監訳にジョセフ・アルバース『配色の設計』(2016年)、オットー・ノイラート『ISOTYPE』(2017年)、カール・ゲルストナー『デザイニング・プログラム』(2020年)がある。近刊に『日本語のデザイン 文字からみる視覚文化史』。