本展覧会では、絵画、書、彫刻、陶芸というそれぞれの分野で現代における新たな表現を試みている、兼子真一、野田ジャスミン、ハシグチリンタロウ、長谷川寛示、森夕香、5名のアーティストの視点を通じて時代に応じ“日本の美意識”がどのように変化しているのかを問いかけます。
なお、本展は、京都を拠点に活動を行うインディペンデント・キュレーター 渡邊賢太郎との共同企画であり、昨年エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社(ACA)が行ったMEET YOUR ART FESTIVAL 2024内で、渡邊と共同企画した「和を以て美を見出す」を深化させる形で、WALL_alternativeが位置する麻布という場所性を紐解きながら展覧会を構成するとともに、京都を拠点に活動するYOKOYAMA TATAMIの協力の元、新たな展示空間が立ち上がります。
「和を以て景を綴る」
“Weaving Landscapes with Harmony”
東京・麻布地区。この地は、古くから日本の歴史と文化が交錯する場所として、独特の風情を湛えています。江戸時代、麻布地区は武士階級が住む”上町”として栄え、文化・芸術の発展とともに、商人文化が盛んな新しい時代を迎えました。また、近代以降、外国文化が流入し、西洋的な美意識と日本固有の精神性が融合する場としての役割を担うようになります。特に戦後、経済成長と共に麻布地区は「国際的な文化の交差点」としての地位を確立し、その地で育まれたアートと街の風景は密接に絡み合っています。麻布という場所が持つ歴史的価値は、アートにおける「新旧の調和」や「対話」の象徴でもあります。
そこで、本展覧会では、日本の伝統的な美意識や精神を根底に置き作品を制作する5名の現代アーティストの視点を通して、今を生きる私たちの感覚がどのように変化し、時代に応じて美がどのように変容するのかを問いかけます。
絵画、書、彫刻、陶芸というそれぞれの分野で、アーティストたちがどのように日本の美意識を再解釈し、現在における新たな表現を生み出しているのか。日本の美術が大切にしてきた「間」や時間の流れ、自然の変化、「無常」などの哲学的要素が、どのように今日の社会で新たに具現化されているのか。
過去と未来、伝統と革新が交錯する中で、本展での作品と空間の調和、作品と鑑賞者の対話、この場に居合わせた人々の会話が織り成す「景」は、人それぞれの感覚の中にも新たな「景」を綴ってくれるでしょう。
本展覧会を通じて、日本の美意識が持つ哲学や価値観がどのように現代に生き続け、変化し続けているのか、その現代の美意識を感じていただければ幸いです。西麻布 WALL alternativeで綴られる「景」が過去を尊重しながら、未来に向けての新しい視点を創造していく対話を生み出してくれることを期待しています。
キュレーター・渡邊賢太郎