1938年にキューバで生まれたグラフィックデザイナー、フェリックス・ベルトランは、1956年から1962年にかけてミッドセンチュリー・モダニズム時代のアメリカに留学し、さまざまな芸術運動の影響を受けました。キューバに帰国後の20年間、キューバ革命後の最も人気のあるグラフィックデザイナーの一人として活躍しました。その後メキシコに移住し、コーポレートデザインの分野や大学の仕事を通じて、2022年に亡くなるまでデザイン文化に貢献しました。
本展キュレーターのソニア・ディアスとガブリエル・マルティネスによる17年に及ぶイベロアメリカ(スペイン語やポルトガル語が使われる中南米諸国を主とする地域)のグラフィックデザイン研究を経て、2022年にマドリードで「フェリックス・ベルトラン:ヴィジュアル・インテリジェンス」展が開催されました。本展では二人の研究の成果とあわせて、DNP文化振興財団が所蔵するアーカイブから、日本を代表するグラフィックデザイナー 福田繁雄とベルトランとの交流を示す資料も紹介します。ベルトランは1970年32歳の時、大阪万博キューバ・パビリオンの壁面デザインを担当し、来日しています。また福田はキューバのハバナで1970年に開催された国際芸術会議に招待され、3週間あまりキューバに滞在し、その際ベルトランとも対面しました。2人の交流はそこから30年以上にわたり続くことになりました。またテレサ・カマチョ氏所蔵の貴重な資料も初公開されます。本展が、彼の業績やとイベロアメリカ・デザインの歴史を知る機会になれば幸いです。