2000年に東京大学大学院に設立された文化資源学研究室に招かれ、20年近くにわたって研究を率いてきた木下直之。その研究の軌跡をたどる、木下直之を全ぶ集めた展覧会を開催いたします。
木下は1980年に兵庫県立近代美術館学芸員として研究をスタートさせ、「日本美術の19世紀」(1990年)、「描かれた歴史」(1993年)などの展覧会を企画担当したのち、東京大学総合研究博物館に移り、そこでも「博士の肖像」(1998年)、「ニュースの誕生」(1999年)などのユニークな展覧会を実現させました。
文化資源学研究室では、近代の日本美術を主要な関心としつつも、写真や建築、記念碑や銅像、祭礼や開帳など、美術に隣接するものへと関心を大きく広げ、最初の著書『美術という見世物』(1993年)にいう「見世物」をキーワードに、世の途中から隠されてしまったもの、忘れられたもの、消えゆくもの、その場かぎりのものに目を向けてきました。その眼差しは、それらを生み出す背景、文明開化・度重なる戦争・戦後復興・高度経済成長など社会や国家の有り様にも届いています。
この展覧会は、木下がこれまでに書いた 12 冊の本を全集に見立て、「本物とにせもの」、「作品とつくりもの」、「建築と建物」、「都市とモニュメント」、「ヌードとはだか」など、ものごとの境界線をたどり直します。本を1冊ずつめくるように、展覧会という見世物小屋に足を踏み入れてみてください。近くても遠い場所へとみなさまを連れ出します。
またこれに先立ち、ギャラリーエークワッド HP 特設サイトにて、2017年12月よりWeb 版「木下直之を全ぶ集める」展を開催中です。