1997年に急逝したグラフィックデザイナー亀倉雄策の生前の業績をたたえ、グラフィックデザインの発展に寄与することを目的として、1999年、亀倉雄策賞が設立されました。この賞の運営と選考は公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が行い、毎年、年鑑『Graphic Design in Japan』出品作品の中から、最も優れた作品とその制作者に対して贈られます。
第22回は、菊地敦己氏のブックデザイン『野蛮と洗練 加守田章二の陶芸』に決定しました。菊地氏は、大学在学中よりグラフィックデザインの仕事を始め、2000年ブルーマーク、2011年個人事務所を設立。青森県立美術館のVI・サイン計画、ミナ ペルホネン、サリー・スコットなどファッションブランドのアートディレクションをはじめ、書籍、雑誌、パッケージなど、数々の優れたデザインを手がけてきました。一方、活動初期の頃からオルタナティブスペースやブックレーベルの運営、飲食店のプロデュースなど、2000年以降の時流を牽引するような、多角的な活動を継続的に行っています。批評性を含んだ表現の中に実用性を両立させた菊地氏のデザインは、物事の本質をつかみ、的確な結果を導き出すと高く評価されています。
今回の受賞作品は、菊池寛実記念 智美術館で開催された陶芸家の作品展『野蛮と洗練 加守田章二の陶芸』の図録のブックデザインです。20世紀後半に活躍し、50歳を目前に夭折した現代陶芸作家の、短くも濃い作陶人生の変遷がおさめられた図録に、選考委員から「編集、撮影、印刷、造本のすべてにデザイナーの力が発揮された、一分の隙もない仕上がり。作品から読み取ったものを、本としてどう存在させるかが考えられている」「作品集というものは大仰になりがちだが、加守田章二という人物がそのまま伝わってくる」といった称賛の声が上がりました。この受賞を記念して個展を開催いたします。